蔵づくり Kurazukuri
(ステップ・動作):
(コメント):フォークダンス「蔵づくり」:日本の心を持つスコットランドの踊り
フォークダンス「蔵づくり」は、その名から日本の民踊を想起させますが、実はスコットランド発祥の伝統舞踊「スコティッシュ・カントリーダンス」の一つです。日本のフォークダンス愛好家、星野薫氏によって創作されたこの踊りは、日本の感性を取り入れたユニークな作品として知られています。
「蔵づくり」という名の由来
「蔵づくり」という和名は、スコティッシュ・カントリーダンスとしては極めて珍しいものです。その具体的な由来や意図について、振付者である星野薫氏による詳細な記録は広くは公表されていません。しかし、フォークダンス愛好家の間では、日本の伝統的な建築様式である「蔵」の重厚で美しい佇まいや、酒蔵での酒造りの工程など、日本の原風景や文化を踊りで表現しようとしたのではないかと解釈されています。踊りの構成や動きの中に、直接的に「蔵」を模倣する部分はありませんが、その落ち着いた雰囲気や格調高い流れが、日本の伝統美と通じるものがあると感じる踊り手も少なくありません。
踊りの特徴と構成
「蔵づくり」は、男女3組(計6名)が一列に向かい合って踊る「ロングウェーズ(3組)」という隊形で構成されます。音楽は、ゆったりとした4分の4拍子の「ストラスペイ(Strathspey)」という種類のスコットランド音楽が用いられます。
踊りは、以下のようないくつかの特徴的なステップやフィギュア(決まった動きの組み合わせ)で構成されています。
- ストラスペイ・ステップ (Strathspey Step): この踊りの基本となるステップで、優雅で滑らかな移動が特徴です。
- フィギュア・オブ・エイト (Figure of Eight): 1組目のカップルが、他の2組のカップルの周りを8の字を描くように進む動きです。
- バック・トゥ・バック (Back to Back): パートナーと背中合わせですれ違う動きで、「ドー・サー・ドー(Do Sa Do)」とも呼ばれます。
- セット・アンド・リンク・フォー・スリー (Set and Link for three): 3組のカップルが連携して行う動きで、この踊りの見どころの一つとされています。複雑な位置交換を伴うため、踊り手同士の協調性が求められます。
これらの動きが40小節にわたって組み合わされており、1組目のカップルが踊り終えると、2組目、3組目へと主役が移り、全員が同じ振り付けを踊るまで繰り返されます。
踊り方(初心者向けの概要)
「蔵づくり」を踊るには、スコティッシュ・カントリーダンスの基本的なステップとフィギュアの理解が必要となりますが、ここでは大まかな流れを紹介します。
- 導入: 音楽に合わせて、まずは基本的なストラスペイ・ステップで簡単な挨拶のような動きから始まります。
- フィギュア・オブ・エイト: 1組目のカップルが、男女それぞれ列をなしている2組目と3組目の間を、滑らかなステップで8の字を描きながら進みます。
- バック・トゥ・バックとセット: パートナーと背中合わせですれ違った後、向かい合ってステップを踏む「セット」という動きが入ります。
- セット・アンド・リンク: 3組のカップルが一体となって行うフィギュアです。互いに位置を交換し、美しいフォーメーションの変化を見せます。この部分は特に正確さが求められ、踊りのクライマックスとも言えるでしょう。
- 繰り返し: 1組目のカップルが所定の位置に戻ると、今度は2組目が主役となって同じ一連の動きを繰り返します。
まとめ
フォークダンス「蔵づくり」は、スコットランドの伝統的なダンス形式に、日本の「蔵」という独特の美的観念を融合させた、興味深い作品です。その落ち着いた曲調と優雅なステップは、踊る者にも観る者にも、奥深い魅力を感じさせてくれます。もしフォークダンスの集いなどで「蔵づくり」の曲が流れた際には、その背景にある日本とスコットランドの文化の融合に思いを馳せながら、楽しんでみてはいかがでしょうか。
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